ロシア、非友好国の撤退企業に寄付義務付け
ロシア政府は、「非友好国」企業が同国から撤退する際、資産売却額の少なくとも10%をロシア政府予算に寄付することを義務付けた。
財務省のウェブサイトに3月27日に掲載された文書で明らかになった。これによると、外国投資を監視する政府委員会は、ロシアに制裁を科す「非友好国」企業の資産売却に関する要件を変更。従来は売却額の10%をすぐに寄付するか、1~2年間の分割払いにするかを選べたが、分割払いは選択できなくなった。
ロシアから撤退する外資系企業は既に、昨年12月導入の措置によって、第三者が評価した資産価値を50%割り引いて売却することが求められており、大幅な減損損失を計上する企業が続出している。
一方、当局が西側企業の資産を国有化することを可能にする法案は、昨夏に議会を通過しなかった。
しかし、昨年8月5日にプーチン大統領が署名した大統領令は、非友好国企業が主要エネルギー事業や銀行の株式を売ることを原則禁止した。 ロシアのプーチン大統領は、「非友好的」な国の外国人投資家によるロシアの大手企業および主要銀行の株式保有を禁止する法律に署名した。
この法律によると、ロシア政府はこの法律の対象となるロシア企業のリストを作成する予定で、その中にはシステム上重要な銀行や売上高、従業員、資産、納税額で一定規模以上の企業が含まれるという。
この法律の下では、非友好的な国の外国人投資家の権利は停止され、このような投資家が保有する株式はロシア人の株主に比例配分される可能性があるという。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は7月16日、デンマークのビール大手カールスバーグとフランス食品大手ダノンがロシアに保有する資産を一時的に国有化する大統領令第520号(2023年7月16日付)に署名した。これは、ロシアで発電事業を行うドイツとフィンランド企業の資産を国有化した際の大統領令第302号(4月25日付)にカールスバーグとダノンの関連企業を追加したもの。資産管理は連邦国有資産管理庁(ロスイムシェストボ)が行う。
国有化の対象となる資産は、ダノンが子会社を通じロシア法人の普通株合計約833億株、カールスバーグ関連企業が保有するバルチカ(注1)の全ての株式。今回の突然の国有化は、軟調が続く通貨ルーブルレートに影響を与える可能性を懸念し、外国企業によるロシア資産売却を阻止しようとするロシア政府の意図が働いたとの見方がある。ダノンとカールスバーグは既にロシア事業の売却を決定し、ロシア企業と売却交渉に入っていた。専門家からは、この措置は今回の交渉だけではなく、外国人が関与する資産売却の交渉に影響を与えかねないとの見方も出ている(コメルサント2023年7月16日)。
今回の措置には、外国企業から懸念の声が上がっている。在モスクワの外国企業団体幹部はジェトロに対し(7月18日)、「前回の電力関連企業の資産国有化については、基幹インフラということで、説明できなくもないが、今回のような食品分野での(事実上の)接収の背景は全く理解できない。非常に悪いタイミング(注2)でロシア政府からの外国企業へのメッセージとなった」と述べ、ロシアの投資環境に対する外国企業の不安が高まるとの見方を示した。
(注1)サンクトペテルブルク市内に工場を持つ地場ビールメーカー。カールスバーグが2008年に他社が保有する株式を全て買収した。
(注2)ロシア政府は7月7日、外国企業がロシアの資産を売却して撤退する際の手続きを改正。売却額に応じて一定の国庫納付に加え、撤退企業が事業の買い戻しを行う際の制限措置を追加した。
ロシアに進出する日本企業37社がロシア事業の停止・制限を発表
一方、日本の岸田政権も欧米と足並みを揃え、ロシアへ経済制裁を発動したことから、日露経済への影響も懸念されている。
2022年3月15日の時点でロシアへの進出が判明していた日本の上場企業168社のなかで、ロシア事業の停止や制限などを発表・公開した企業が37社となっている。
その内訳は製造業がほとんどで(28社)、ロシアへの経済制裁によって物流が停滞し、かつ部品調達も困難となったことを、ロシア事業の停止および中断のおもな理由として挙げている。
RIAノーボスチ通信社 8月18日